大島渚監督訃報によせて。

何度となく流れる野坂昭如とのシバキ合いシーン、おもしろおかしく紹介されているが、大島渚という稀代の名監督でありボキャブラで見せた「ブーマーはだからダメなんだよ!!」等の名言を残した巨人の最後をあのケンカシーンの簡単な紹介だけで済ませていいものだろうか。
ぼくは大島監督の鎮魂のためにもあの野坂さんとの悶着を老人同士のみっともないケンカとして半笑いで済ましてしまうのは大きな間違いだと申し上げたい。ぼくは総合格闘技ファンとしてもうちょっと深くあの試合を穿って見てみたいと思う。
 まず有権者に訴えたいのは、野坂氏の右ストレートがきれいにアゴに入っているということ。ここで老人の弱弱しいパンチであると評し、一笑に伏す評者が大多数を占めている印象がある。しかし、ニック・デイアスのパンチが一見スローでパワーを感じられないのに反し確実に相手にダメージを与えている事実を鑑みれば、野坂氏が泥酔しているにもかかわらずキレイに相手の急所をとらえている事実は氏の並々ならぬボクシングテクニックをうかがい知ることができる重要なファクターだと思う。
さらに氏の少年院入所経験のある殺伐とした生い立ちを加味すれば、氏のステゴロ経験値の高さ、つまりはケンカなれしているであろうという推測。
ここで驚くべきは大島監督の回復力である。プロボクサー並みの野坂氏のパンチをまったくの無防備でモロにヒットされヨロヨロと数歩後ずさる監督。確実に脳震盪を起こし足にきている状態から〜の、間髪を入れぬすばやいマイク攻撃の反撃!!数秒前は笑顔であったのに、状況を理解する早さは尋常でない。
そしてフラッシュダウンに近いダメージからの驚異的な回復力は、先日行われたドッドソン対ジョンソンでのジョンソンのダウンからの素早い立ち直りを想起させるほどだ。ちょっと休憩。
めんどくさくなったので試合レビューをやめるが、野坂氏と大島氏、ともに長く晩年闘病生活を送ることになったのはなんとなく感慨深いものがあるようなないようなかんじが少しする。