走る取的

殺されたお相撲さんの当初の死因は虚血性心疾患と聞いた。この病名を聞くのはナンシー関伊勢市役所のメタボ侍に続いて3度目だ。おそらく原因とか外見とかではわかりにくい、金に目の眩んだ医者や疚しいところがある相撲部屋の関係者にとって都合のいい病名なんだと思う。全てというわけではないだろうがこの死因を死亡診断書に書かれたことのあるご家族は万が一ということを考えて相撲部屋の関与を疑ってかかる必要があるかもしれない。
ところで序の口など位の低い力士をふんどしかつぎとか取的、と侮蔑の意を込めて呼ぶことがあるらしい。今回の事件でもまちがっても「取的が殺された」とか、侮蔑の気持ちがなくても言ってはいけない。と思う。たぶん。
筒井康隆の初期短編に「走る取的」という傑作があって、夜の街で肩があたったお相撲さんに「けっ取的が」と一言言っただけで殺されるまでどこまでも追跡される、っていう話がある。フウフウ言いながらどこまでも走って追いかけてくるお相撲さんの描写がスピルバーグの「激突」のダンプより恐ろしい。