報道ステーション

やっぱり世田谷の落雷はかなりのものだったようでニュースでも報じられていました。私もその時間バイトで外にいたんですがすごい光と音でした。遠くで雷鳴が聞こえるな、と思っていたらそれがどんどん近くなって稲妻と音との間隔が短くなってきました。それでも私はもう少しで作業が終えられる段階でしたので手を休めず、早く家に帰りたい一心でものすごい雷鳴がすぐ近くで鳴り響いていることを気に留める余裕すらなかった。その次の瞬間、耳元ですさまじい音がするとともにおれの全身をショックが貫いた。おれは薄れていく意識のなか、しまった、すぐ避難するべきだった、と一瞬後悔していた。
どのくらい経ったろう。私はふと意識が戻り目が覚めた。生きている。よかった雷は直撃せずすぐ近くに落ちただけだったようだ。怪我もないようだ。おれは自分の身体を点検した。すると、自分の着ていたシャツがズタズタに破れボロ布のようになって体からぶらさがっているのに気がついた。なんだ?これは・・・・さらに見るとおれの腕がおれの腕でなくなっていた。
その腕は見たこともないような太さで筋肉の鎧で覆われていた。おれはパニックになり泣き喚いた。「パパ、パパ、見て、ぼくの腕が、ぼくの腕が超人ハルクになっちゃった!!!そうださっきのあのカミナリ、あのショックで・・・・・・た、たいへんだ。ぼくバケモノになっちゃったよお!!」
すると近くにいたバイトの同僚の姿が目に入った。「た、たいへんだ、おれ、超人ハルクになっちまった!!」
同僚はつまらなそうにおれをチラっと見ると自分の作業にすぐ戻ってしまった。
「おい、なんだよ!!見てみろよこの腕を!!さっきのカミナリだよ落雷のエネルギーでおれの身体が・・・・・」
同僚はさも面倒臭そうに嘆息し言った。「見てみろよ」アゴでしゃくったその先にはカガミが。その中にはおれではない見知らぬ男の姿が映っていた。おかしなヒゲを生やしているその男は・・・・・「ハ、ハルク・ホーガン・・・・・」
な、なんだ、そういうことだったのか・・・・・完全な早合点だった。おれは恥ずかしさとみじめさで消え入りそうになりながらすごすごと作業に戻ったのだった。